散文詩の間へ /翠玉館玄関へ

『影姿』


夕暮れ。
いつも一緒に歩いていた学校から駅までの道。
授業も遊びも一緒だった。
勝気で怖いもの無しを装うあなたの
純粋で繊細な面を垣間見た時、
私は激しくあなたに惹き付けられた。


友人以上にはなれなかった。
あなたが欲したものは私には無いとわかっていたから。
見返りなんていらなくて、
ただ友として同じ時を過ごせるだけで充分だった。

夕暮れの長く伸びた影の中で、
秘かに手を重ねられればそれで幸せだった。


今でも夕焼け空を見ると懐かしく思い出す。
あなたと手を重ねた夕暮れの長い影の姿を。