散文詩の間へ /翠玉館玄関へ

『傘 Side:A』



雨の中泣いていた君に
僕は傘を差し出していたのだけど
君は気付かないまま

肩を震わせ俯いている君にかける言葉がなくて
ただ無言で傘を差し出していただけだったからかもしれない

やがて雨が止んで

君は何かを吹っ切るように空を見上げ
歩いて行ってしまった

僕がするべきだった事は
君にちゃんと声をかけて
傘に入れてあげる事だったのだろう

虹の下へ消えた君
今すぐ追いかければまだ間に合うかな?