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『北へ。――彼の名は――』


彼は北へ向かい旅を始めた。

急ぐ事なく、

後戻りせず。


人々は彼の来訪を待ち侘びる。

吹く風に兆しを感じ、

空を見上げ彼を待つ。


彼が旅した跡には喜びや温もりで満ちる。

誰の心にも優しさが生まれる。

それが、彼の持つ力。


やがて最北の地に辿り着いた彼は海へと消える。

厳しい冬の終わりと優しい春の訪れを告げ、

彼の役目は終わる。


彼の名は、桜前線。