散文詩の間へ
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翠玉館玄関へ
『北へ。――彼の名は――』
彼は北へ向かい旅を始めた。
急ぐ事なく、
後戻りせず。
人々は彼の来訪を待ち侘びる。
吹く風に兆しを感じ、
空を見上げ彼を待つ。
彼が旅した跡には喜びや温もりで満ちる。
誰の心にも優しさが生まれる。
それが、彼の持つ力。
やがて最北の地に辿り着いた彼は海へと消える。
厳しい冬の終わりと優しい春の訪れを告げ、
彼の役目は終わる。
彼の名は、桜前線。