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『鏡像』


鏡の向こうの君に手をそっと伸ばした。

君の左手と僕の右手。

冷たい鏡面が直接触れ合うのを妨げる。

ごめん、と呟き俯く。

君がこちらにいるべきだっただろうに。

同じように俯く君は、

僕の鏡像に過ぎないと解っているけど。

君が鏡の向こうから、

僕を憎んで入れ替わる隙を狙ってると、

思わずにいられない。

僕は現実から逃げたいだけだって事を、

君の人格を夢想して、

双子の様な君に憎ませては自分を罰し、

生きる赦しを乞う。