『Happy Halloween, so sure.』
「Trick or Treat!」
外が暗くなってきた。街を歩き回る子供たちの声が聞こえて、僕らも急いで準備する。大きなボロボロの布に目の所だけ穴を空けて頭からかぶる。簡単にゴーストの仮装のできあがりだ。街へ出て、カボチャの灯りを目印に僕らもドアをノックする。
「Trick or Treat!」
「あらあら、今度は小さなゴーストさんたちのお出ましね。はい、お菓子をどうぞ。」
「Happy Halloween!」
お菓子をもらったらまた次の家へ向かう。もらったお菓子を袋につめて、袋がいっぱいになってもまだカボチャが飾られた家を回る。来られなかった小さな子たちにも分け合わなくちゃいけないし、まだまだぜんぜん足りない。すれ違う他の子たちとも「Happy Halloween!」とあいさつし合う。楽しいHalloweenを、本当にね。みんな優しくて、夜でも街全体がにぎやかで楽しい雰囲気になっている。こんなに楽しくて幸せな夜は他にない。今夜だけだから。みんなが優しいのは。
お菓子でいっぱいの袋をたくさん抱えて寝床に戻ろうとすると、“優しい大人”が声をかけてきた。
「そっちはスラム街だ。本物のバケモノ共が巣食ってるから、近づいちゃだめだよ。早くお家におかえり。」
「はぁ〜い。」
素直に頷いていったん離れる。辺りに誰もいなくなったのを確かめて、僕らは寝床に戻った。今にも倒れそうな廃屋では、僕らの帰りをもっと小さな子が待っている。もらったお菓子を、長持ちするものとそうじゃないものとに分けて保管する。これだけあれば、しばらくはおなかをすかせて泣くこともないだろう。今夜は先祖が死者の国からこの世へ帰ってくる日らしい。それに便乗してゴーストや魔女といったモンスター達がこの世に現れるんだとか。あるのかどうかも分からない死者の国にいる先祖と、存在しないだろうモンスター達。先祖どころか親の顔も知らない僕らは、そんなモンスター達の方に感謝する。なんにも持たない僕らを、このお祭りに参加させてくれるから。みんなが優しいのはHalloweenの魔法なんだろう。明日になればまた、街の人達は物乞いをして生きる僕らを嫌って、害虫みたいに追い払う。秋の夜は寒い。「おやすみ」を言い合って、僕らは薄いぼろぼろの布にくるまって身を寄せ合う。明日もあさってもずっとずっとHalloweenならいいのにと願いながら。
END
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