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『龍の守護者』


 魔王が勇者によって討たれた後、各王国の兵士達は魔王軍の残党を殲滅させる任務に追われていた。勇者一行は魔王を討った後行方不明になっている。だが王を失った魔王軍は指揮系統が乱れ能力も低下しており、ただの人間でも戦闘訓練を受けた者なら互角かそれ以上に戦えるほどになっていた。そんな中、魔王を越える力を持つ邪神の存在が噂され始める。魔王軍残党はこの邪神を新たな主に迎えるべく、その封印を解く準備を進めているのだという。人々の間に新たな不安が広まった頃。水龍を祀る小さな村を、王家直属の騎士だという男が訪れていた。
「水龍様が、邪神の手先だって!?」
村長宅で憤りの声を上げたのは、村長の母である老婦人だった。そんなはずはないと憤る母のモーディを宥めながら、村長のジグオスは騎士を見据える。
「それは確かなことですか?」
「間違いない。弱体化しているはずの魔物が、我々討伐隊に甚大な被害をもたらした。討伐隊からは水龍に襲われたとの報告も上がっている。水龍が邪神復活の為に、魔物へ力を与えているのだろう。」
「馬鹿言うんじゃないよ! 水龍様はアンタらの城ができるよりもずっと昔からこの地域を守って下さってるんだ! それなのに邪神の手先だなんて罰当たりな!」
「母さん、落ち着いて。」
騎士に殴りかかろうとするモーディを必死に抑え、ジグオスは怪訝な顔を騎士へ向ける。
「母の言う通り、水龍様は魔物が現れるより遥か昔からこの地域の守護龍として崇められています。それなのに、水龍様が邪神の手先だと仰られても納得できません。」
ジグオスの言葉に騎士は大げさに首を振り顔をしかめた。
「これだから因習に取り憑かれた連中は困るのだ。人外を崇めるのも大概にした方がいい。文明から取り残された野蛮人のする事だ。」
村民を侮蔑する言葉にジグオスも顔をしかめる。
「で、その野蛮人にあなたは何をお求めで?」
「我々では歯が立たないが、長年崇めてきたお前らなら水龍の弱点も知っているのだろう? 王国領に暮らす人民を守るために、邪神の手先である水龍の討伐を命じる。これは王命だ。従わないのであれば、この村は邪神の手先とみなし殲滅の対象とする。」
黒鉄の兜の下から一同を睨み一方的に言い放つと、真っ黒なマントを翻し騎士は村を後にした。
「ジグオス! なんで止めるんだい!? あんな無礼な奴は私の魔法で消し炭にしてやるよ!」
「あいつはただの人間だ。それはまずいよ。」
「でも、どうするの? 水龍様を討たなければ、あの人たち本気でこの村を滅ぼしに来るわ。お義母さんの言う通り、返り討ちにして消し炭にしちゃう?」
「ライネ、君までそんな物騒なこと言わないでくれよ。」
妻の言葉に頭を抱えたジグオスに対し、モーディは目を輝かせる。
「全く男どもは頼りにならないねぇ。こうなったら私たちで水龍様と村を守ろう。」
「頼むから落ち着いてくれ! もし奴らが本気で攻撃してきたら、真っ先に犠牲になるのは力を持たない者達だ。この村には力を持たない者の方が圧倒的に多い。それを忘れないでくれ。」
興奮する母と妻を一喝したジグオスだが、ならばどうすると問われれば頭を抱えてしまう。
「ねぇ。取りあえず、水龍様の様子を見に行ったらいいんじゃない?」
沈黙してしまった大人たちに割って入ったのは、隣室で話を聞いていた娘のミディアだった。「子供には関係ない」と締め出されたことに不満げな様子である。
「お城の騎士が、弱くなった今の魔物にやられちゃうっておかしな話だと思うの。あいつが嘘をついてるのか、本当にこの辺の魔物が強くなってるのか。もし本当だったらそれって水龍様に関係あるのか、確かめたらいいんじゃないの? たぶん、あいつが嘘をついてるんだと思うけど。嫌な感じがしたもん。でも水龍様は関係ないってちゃんと証明しないと、あいつ適当なことでっち上げて水龍様と私たちを襲うつもりだと思う。」
「ミディアは賢い子だねぇ。城の兵士が弱体化した魔物にも太刀打ちできないなんて、あいつらの怠慢か嘘に決まってるよ。」
苦々しい顔で悪態を吐くモーディを宥めながらもジグオスは頷く。
「それがいいね。じゃあ、俺が明日の朝一番に行ってこよう。何事もなければ夕刻までには戻れるだろう。」
「私が行くよ! あんたには村長の仕事があるだろう。村長が留守にした途端、あいつらが襲ってくるかもしれない。」
「母さん、何言い出すんだ。水龍様の泉への道にはまだ魔物が出るんだぞ。」
「昔はあんたや大勢の弟子に魔法を教えてたのを忘れたのかい? 引退したとはいえ、まだまだ衰えちゃいないよ。怠け者の兵士なんかより私の方がよっぽど強い。」
「母さんが魔法使いとして強かったのは知ってるけどさ、引退して何年経つんだよ。」
「年寄りだからって馬鹿にするんじゃないよ。まだまだあんたたちを守れるさ。それにね、水龍様は昔、川に落ちて溺れた私を救って下さったんだ。こんな時こそ恩返しをしなくちゃいけないんだよ。誰が何と言おうと私は行くよ。」
モーディは手にした杖を頭上に掲げ力強く宣言する。青い宝玉がはめられた木製の杖は、今でこそ歩行の補助に使っているものだが、かつてはこの杖を振るって村の周囲で暴れる魔物を退治していたのだ。モーディの真剣な眼差しにジグオスは仕方なしに頷く。「村長の留守中に村が襲われるかもしれない」というモーディの言葉も否定しきれない。人間の兵士が相手ならば、戦える力を持つのはモーディよりも自分の方だ。
「母さんは言い出したら聞かないからな。わかったよ。ただし一人じゃ行かせられない。」
「なら、私がお供するわ。」
「わたしも行きたい!」
そろって挙手したライネとミディアに困り果てた顔でジグオスはため息を吐く。
「ライネ、ミディア、危険だってわかってるのか?」
ライネは真剣な表情で頷いた。
「もちろんよ。この村を、水龍様を守りたいのはみんな同じ。それに魔王が倒された今、魔法の力はいずれ必要とされなくなっていくでしょう。ミディアには、自分が持って生まれた力がどういうものなのか、実際に見せておきたいの。お義母さんの、いいえ、魔法使いモーディの弟子として、この事件に取り組ませて。」
「遊びに行くんじゃないことくらいわかってるよ、お父さん。あんな言い方されて黙っていられないじゃない。」
真剣な眼差しで詰め寄る二人にジグオスは頷いた。
「わかった。なら弟のジオードにも同行させよう。剣の腕が立つから、もしもの時に君達を守れるだろう。」
表情を引き締めジグオスは三人を見据えた。
「では、村長として依頼する。あの騎士の言う事は本当なのか、水龍様の様子を確認し報告してくれ。くれぐれも無茶はしないように。危険だと判断したらすぐに撤退すること。」
「了解!」
翌朝、日の出前に訪れたジオ―ドにモーディはやれやれと首を振る。
「息子に守られるほど衰えちゃいないつもりなんだがね。」
「万が一のためだよ。魔法が効かない魔物もいるかもしれないからね。」
「ジオード、母さん達を頼む。」
「任せとけって。村は兄さんが守ってくれよ。その騎士は確かに怪しい。」
「わかってる。王家直属の騎士が名乗りもしないなんて、俺達を見下してるか、後ろ暗いことがあるかのどっちかだ。」
村人たちの不安を煽らぬようにと陽が昇る前に出発する。松明を掲げながら山道に入った。水龍がいる泉は山の中腹にある。モーディを先頭にライネとミディア、ジオードがしんがりを守って歩いていた。村が見えなくなるまで山道を登ると魔物の気配が漂い始める。低く唸る獣のような声。風もないのに何かが木々を揺らす。だが、あからさまな敵意を向けていながら様子を伺うだけの魔物に、モーディはしびれを切らし叫んだ。
「いるのはわかってるんだよ! こそこそしてないで出てきな!」
何も挑発しなくても、とジオ―ドがため息をついた瞬間、草むらの陰から六本の足に真っ赤な目とたてがみを持つ魔物が飛び出してくる。現れたのは三頭、咆哮を上げて一同を取り囲んだ。口角を上げ笑いモーディは杖を構える。
「待ち伏せだの奇襲だの、卑怯な手段は大嫌いなんだ。」
モーディの放った炎がミディアの起こした風を孕んで勢いを増し魔物に襲いかかる。ライネが張った防御魔法の見えない壁が、魔物の爪や牙を弾き返す。獣のうめき声が上がる。魔法による熱風と煙が収まった頃、現れた魔物の群れは全て倒れ伏していた。
「おばあちゃんすっごーい!」
「さすがです、お義母さん。いいえ、師匠。」
「フン。口ほどにもないねぇ。」
「母さん、こいつら一言も喋ってないよ。」
得意げなモーディの言葉につっこみながらも、またたく間に終わってしまった魔物との戦闘にジオードは苦笑する。魔物が弱体化しているとはいえ、母がここまで強かったとは。ライネとミディアのサポートも息が合っている。自分の出番は魔物に対しては無さそうだ。気を引き締めて周囲を警戒する。今のところ、魔物以外に不穏な気配は無い。
「さぁ、さっさと行って水龍様の無事を確かめてこないとね。」
泉へ向かい山道を登り続ける。モーディ達を格上と判断したのか、魔物はそれ以上近付いてこなかった。陽が昇り切った頃、泉に近付いた一同の前に異様な光景が広がる。傷を負った無数の魔物が倒れている。そのほとんどは絶命していた。生々しい血の臭いが漂っている。
「一体、誰が……?」
モーディ達が顔を見合わせた時、ひと際大きな咆哮が響いた。泉の方から聞こえたその声に言葉も無く走り出す。
「おばあちゃん、あれ!」
いち早く駆け寄ったミディアが驚愕の声を上げ泉を指差す。美しく澄んだ泉は紫に染まり、水面に龍の長い身体が浮かんでいる。
「水龍様!」
モーディ達の声に水龍はゆったりと身体を起こすと、突然咆哮を上げ長い尾を勢いよく振り回した。水龍の攻撃を転がるように避け、互いの背を庇うようにして立ち水龍を見つめる。
「どういうことだい……?」
泉に浮かんだ水龍は低い唸り声を上げ一同を見据える。血が流れることを厭い、全ての生命を、魔物でさえも守る水龍が、人間を襲うなど考えられない。泉の周囲に倒れていた魔物たちも、水龍がやったのだろうか。咆哮を上げた水龍が身体をのけ反らせた。一同が身構えた瞬間、モーディは「あっ!」と声を上げ水龍の顔を指差す。
「水龍様が荒れている原因はきっとあれだ。」
モーディが示した水龍の喉元、黒い棒状の物が刺さっているのが見えた。
「何て罰当たりな!」
「早く抜いてあげましょう。」
「でもどうやって?」
改めて水龍を見つめる。咆哮を上げ尾を振るう姿は、痛みに苦しんで暴れているように見えた。
「ライネ、水龍様の動きを抑えられるかい?」
「はい。水龍様、お許しを。」
ライネが両手を水龍に向け魔力を込める。ライネの両手から細い光の帯が放たれ、水龍の身体を包み動きを止めた。水龍の身体が小刻みに震えている。
「よし、そのまま維持していておくれよ。ミディア、ライネのサポートをお願いね。」
「まかせて!」
モーディとジオードが水龍の頭部へ近づく。龍の喉元、皮膚の比較的やわらかい箇所に黒い矢が刺さっていた。
「あぁ、何てこと。水龍様、もうしばしの辛抱ですよ。」
「待った。これ毒矢かもしれない。俺が抜こう。」
「毒矢だって!?」
矢に手を伸ばしたモーディを慌てて止め、厚い皮手袋をはめたジオ―ドが矢に手をかける。
「ただの矢で水龍様をここまで苦しめられるとは考えにくい。ほら、矢が刺さった周囲の皮膚が変色しているし、泉に流れた血の色や臭いも妙だ。」
ゆっくりと矢を引くと水龍が苦し気な声を上げる。宥めるようにその喉元を撫でながら、モーディは痛ましげな表情でジオ―ドの手元を見つめる。やがて矢が水龍の身体から抜けると、モーディはほっと息をもらした。
「ライネ、水龍様の手当を頼むよ。」
「はい。何て酷いことをするのかしら……。」
ミディアと共に水龍に駆け寄ったライネは傷の治癒と解毒の魔法を施す。毒と水龍の血で穢れてしまった泉にも浄化魔法を施した。水龍は穏やかな表情で目を閉じ、ライネの治癒魔法に身を委ねている。抜いた矢を慎重に布で包み、モーディは静かな怒りを湛えてライネ達を見回した。
「こんなことをした輩をとっちめてやるよ。」
ライネ達も同じ気持ちで頷く。村に戻って矢を調べると矢じりに溝が掘られており、そこに毒が塗り込まれていたのだろうと推測する。故意に水龍を暴れさせ何を企んでいるのか。
「どういうことなのか城に行って問い詰めないといけないね。」
翌日。ジグオスとモーディは城を訪れた。門番の兵士に「水龍の村の件で来た」と告げると、兵士は怪訝な顔をする。
「水龍の村の件、とは……?」
「あんた何も聞かされてないのかい? 一昨日、お城の騎士が来て水龍様が邪神の手先だって言い放ったんだよ!」
兵士の胸倉を掴みかねない勢いで詰め寄ったモーディを抑え、ジグオスが話を続ける。
「一昨日、王家直属の騎士だという人が村に来たんです。王宮の魔物討伐隊が被害を受けたそうで、水龍様自身が部隊を攻撃したという報告もあるそうです。そこで私たちは騎士から水龍の討伐を命じられました。騎士は『王命だ』と言っていましたが、本当なのでしょうか。」
「確認してまいりますのでお待ち下さい。」
しばらくして兵士は困惑顔で戻ってくる。
「王からそのような命令は出ておりませんが……。」
「そんなはずはないね! あの偉そうな騎士を呼びな!」
憤るモーディを必死に宥めながらジグオスは水龍に刺さっていた矢を見せた。
「調査した結果、水龍様の身体にこの矢が刺さっていました。これが水龍様を苦しめ暴れさせていたようです。これに見覚えはありませんか?」
「矢ですか……。王宮の討伐部隊には矢を使う者はいませんよ。あっ、そういえば、魔物討伐の為に最近結成された遊撃部隊に弓矢を使う者が一人います。何だか気味の悪い人で、城の者からは避けられているんです。」
「誰だいそいつは!」
宥めるジグオスの手を振り払いモーディは兵士の肩を揺さぶった。
「ちょ、乱暴は止めて下さい。名前は確か……っぐうっ!」
兵士がその者の名を思い出そうとした時、苦悶の声を上げて兵士は目を見開いた。兵士が身に着けた薄い金属製の鎧を、刃が貫いていた。飛び退いたモーディとジグオスは兵士の背後のいつの間にか立っていた男を見据える。黒鉄の兜に真っ黒なマントを纏った男。一昨日、村を訪れた男に間違いない。
「お喋りな輩は門番に向かない。」
低い声で告げると男は剣を払う。苦し気な悲鳴を上げ兵士は倒れた。
「邪魔な水龍と奴を守る村を消してやるはずだったのに、少々見くびっていたようだ。」
「お前、何者だ?」
驚き立ちすくむモーディを背後に庇い、剣に手をかけたジグオスは男を見上げる。白昼堂々、城門の前で兵士を殺した男の姿に通りかがった城下町の人々から悲鳴が上がった。男はにたりと笑って剣を掲げる。
「魔王などただの捨て駒。我らの真の目的は邪神様の復活にある。手始めに、一番邪魔な水龍を擁するこの王国一帯を滅ぼす。」
「そんなことはさせないよ! 水龍様を苦しめた罰を受けな!」
衝撃から立ち直ったモーディが杖を構える。ジグオスも剣を抜くと、異変を察した兵士が駆けつけてくる。
「おい、何事だ!?」
「魔族の残党だ! 皆の避難と討伐部隊を!」
「わ、わかった!」
血を流して倒れている兵士と禍々しい笑みを浮かべる男に、兵士は悲鳴を押し殺し走り出す。
「無駄だ。」
男が剣を振り下ろす。ジグオスの剣がそれを受け止める。片手で振るう男の剣をジグオスは両手で受け止めている。それでもじりじりと押されるジグオスに男は口元だけで笑う。
「どうした? その程度か?」
「ジグオス、退きな!」
男の力を利用して身を引くと、男の眼前でモーディの放った火球が炸裂する。舌打ちした男が腕を振ると、焼けたマントの下から骨だけの腕が露わになる。
「こいつ、死霊の類か。」
体勢を立て直したジグオスが男を見据える。赤黒く禍々しい鎧を纏った骸骨が、目に赤い光を浮かべ耳障りな声を上げた。
「ここを我らが邪神様の王国とする!」
「ふざけるんじゃないよ。ここは遥か昔から水龍様の庇護する土地。あんたらなんかに渡すもんか!」
モーディは杖を掲げる。骸骨の視線がモーディに向くより早く火球を放つ。骸骨の剣が火球を斬り払う。炎が爆散しジグオスは身を伏せる。モーディは続けざまに火球を放つ。骸骨が剣を振り上げる。ジグオスが立ち上がり剣を振る。駆けつけた王宮の討伐隊も剣を抜き斬りかかる。ジグオスと討伐隊の剣は骸骨の鎧に傷を付ける。骸骨が討伐隊へ剣を向ける。何人かが斬り倒される。二発目の火球が骸骨を襲う。振り向きざまに骸骨が剣を払う。剣に裂かれ小さくなった火球はそのまま流星のように骸骨を襲う。ジグオスたちが鎧に付けた傷が無数の火球により大きなひびになる。モーディが三発目の火球を放つ。ジグオスの剣が骸骨の鎧を砕き剣を握った右腕を切り飛ばす。腕を失くした骸骨が怒りの声を上げる。三発目の火球が骸骨を直撃する。ひびの入った鎧が砕け散り、骸骨は炎に包まれた。
「貴様ら、道連れだ……!」
骸骨の赤い目がモーディを捕える。骸骨の左腕から赤黒い光が発生する。その時、モーディは見た。水龍を模した光の帯が、自分とジグオス、王宮の討伐隊たちを包んでいる。
「一人でお逝き!」
杖を掲げありったけの力を込めた火球を放った。火球は骸骨の左腕から放たれた赤黒い光を飲み込み、威力を増した火球は骸骨に断末魔の声さえ上げる暇を与えなかった。収束した炎と共に骸骨の姿も消えた時、モーディは放心状態の兵士が呆然と呟くのを聞いた。
「あのおばあちゃん、何者……?」
戦闘が終わり城下町の混乱が収まった頃、王国を危機から救った英雄として王から直々に王宮お抱え魔導士の職に誘われたが、モーディは丁重に辞退した。
「私は家族と村を守り、水龍様に昔の恩を返しただけ。英雄は、魔王を倒した救世の勇者様たちだけで充分だよ。」

魔王亡き後、邪神の復活を阻止した龍の守護者の活躍を、知る者はいない。


              END


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